傘はあまり差したくない人

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ミッドサマーを観に行った。

スウェーデンアメリカの合作、公開前からめちゃくちゃ話題だった『ミッドサマー』を観た。

ネタバレあり。

 

www.phantom-film.com

 

監督が、『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスターなので、怖い映画だというのは知っていた。

怖い映画はあまり得意ではないというか苦手なのであまり観たくなかったがどうしても観たかったので(?)友人を誘って鑑賞。

 

あらすじ

精神的に不安定な女子大生ダニーが、最近なんだかうまくいっていない彼氏とその友人の卒論研究のための旅行についてく。

そこはスウェーデンのある集落。夏至祭(ミッドサマー)で彼女たちは世にも奇妙な体験をする......。

 

ざっくりとこんな感じ。

高緯度の北欧の国スウェーデンは、ご存じ夏至の頃は日がほとんど沈まない。

ので、太陽さんさんのなか恐ろしいことが起こる。

 

でもな。

 

怖いことってのは結局夜に起きていたぞ。

 

結局暗闇が一番怖いんじゃ。

 

ああいう不穏で不穏でなにがなにやらとりあえず気持ち悪いなと思う作品は最近だと『マザー!』とか『聖なる鹿殺し』とか。

あとは『ウィッカーマン』にも似ているなと思った。

 

今作はこのどれよりも恐ろしかったが。いや上の三作品は別にホラーじゃないんだけど。

 

この映画の何が怖くて嫌だったかって、怖いシーンがじわじわとくるんじゃなくて急に来るところ。カットが切り替わった瞬間にグロかったりするから勘弁してほしかった。シーンが切り替わる度に「これは怖くない画?大丈夫?」となっていた。精神すり減るわ。

 

主人公が精神的に不安定というのもすごくいやだった。変なお茶を飲むな!!と思った。だってあいつトリップすると怖いもの見るんだもん。

そもそもこの映画、誰にも感情移入できない。なんだろう。どいつもこいつもろくでもない感じがすごい。彼らがひどい目に遭っても、なぜか怖いしんどい!という感情しかわかず、かわいそう!みたいなのはひとつも思わなかったな。おかげでまだなんとか観れたけど。

 

あと思ったのは、これをあり得ない!と思ってみているのはなんというか単に我々が文明人だからだろうなという。

一貫して不穏で不気味な集落を描いているわけだけど、あの祝祭は彼らにとっては伝統であり、あれを行うことになんの疑念もないわけだ。しかもずっと閉じ籠っている集落というわけでもない。村のものはアメリカなりイギリスなり他国に出て大学に通っているものもいる。それでも村に戻れば古くからの慣習に従い、我々にとっては常軌を逸した儀式を行う。

常軌を逸した、うん、そう、逸している。でもそれは本当に、私たちから見てってだけの話。彼らにとってはあれが普通なのだ。

そう考えると、わりと心を落ち着かせて観ることができ、ない。できないわ。いや理屈はわかるけど。だから別に彼らの儀式を否定はしない。そういうところもあるんだなと思う。というか本当にあるんだろうか。ああいう集落って。こっわ。こっわ。

 

怖いけど、でも集落に完全に迎合してしまえば、みんな家族なんだし、意外と居心地いいかも?と泣き叫ぶ主人公と一緒に泣き叫ぶ女性たちを見ながら思ったり......。

 

だからまぁ、多分あの終わりはハッピーエンドなんでしょう。主人公、楽しそうだったし。彼女から見たらハッピーなんだな。私はごめんだけど。

 

民俗学的にもホラー的にも考察がとてもはかどりそうでかなり奥の深い作品だったと思う。めんどくさいから自分では考えないけど。人の考察を読むけど。

奥が深そうなわりには、重要な部分はあらかた説明がされていたのでわかりやすい作品でもあった。

 

総じてかなりよい作品。

ただし二度と観ないがね。

 

そういえば劇中のおじいさんのなかに、あの『ベニスに死す』のビョルン・アンドレアセンがいたようで。誇張なしの絶世の美少年だったビョルンも年をあれだけ取れば本当にただのおじいさんだなと思いましたね。