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スキャンダルを観た。私にもフェミニズムはある。

シャーリーズ・セロンが実在のニュースキャスターそっくりの特殊メイクをほどこされ、本年のアカデミーメイクアップヘアスタイル賞を受賞した『スキャンダル』を観た。

ネタバレあり。

 

gaga.ne.jp

 

 

本作は2016年にアメリカのFOXニュースのCEOがセクシャルハラスメントで訴えられた事件を題材に描いている。

めっちゃくちゃついこないだ。

 

事件そのものについてはまったくもって存じ上げなかった。恐らく当時アメリカで非常に話題になったことだろう。

数年前からMeTooなどで世界的にセクハラや女性蔑視などが問題になり映画業界などは一時期非常に物々しい雰囲気になっていたが(今もか)。TV業界も同じだったようで。

 

こういう華やかな業界というのは、必死になって有名になろうとしている人がたくさんいるからこそこういう非人道的なやり方がまかり通っていたのだろう。

マーゴット・ロビー演じるケイラを責めることは誰にもできない。

 

昨今日本のTwitterフェミニスト界では「性的搾取」という言葉がやたら飛び交っている。ポスターなどの広告にセクシーな(これは主観に寄るところも大きい、から問題になっているんだけど)女性が描かれていると、「性的搾取だ!」と大声をあげて果てには撤去させるような動きがある。

すると常に、「誰の性を搾取しているの?」という声が上がる。「どの辺が搾取なの?」とも。

最もだと思う。

 

今回『スキャンダル』を観て、これこそが「性的搾取」だろうと感じた。広告にいちゃもんつけてかみつくなんて幼稚なことをやっている間に、本当の「性的搾取」がどこかで行われているのだ。

「お前に仕事をやろう、その代わりにお前の"女性"としての部分を私にゆだねろ」と。相手の弱みに付け込んで相手の性を搾取する。これは"女性"だから搾取されるわけではないこともあるだろう。だから「女性搾取」ではなく「性的搾取」なんだろうし。

 

ポスターを見て傷つく人がいるとしても、それはポスターによって搾取されているのではなくて、傷ついたその経緯が悪い。その経緯についてもっと語らうべきだ。

それは『スキャンダル』で描かれたような醜悪なものかもしれない。

 

私は時折自分がアンチフェミだと感じる。過激な意見に反論している自分は女性の味方ではないのではないかと。

だが、ケイラが涙ながらに告白し、自分は汚いと卑下する姿を見て、悲しみと怒りがわいてきた。涙があふれ出た。これが正当な怒り。女性が女性だから、正当な実力ではなく性を持ってしか仕事を得られないのだとしたら、それは間違いだ。断固として正すべきだろう。

 

ただ、見失ってはいけないのは、単なる男性VS女性の構図にはしてはいけないところ。もしかしたら、女性が男性の性を搾取することもあるかもしれない。性的マイノリティのことだってある。すべてを内包して、理不尽な性の搾取をなくすことが大事だ。オタクとTwitterフェミニストで戦ってないで、手を取り合って本当の問題に立ち向かっていくべきだ。

 

 

 

それにしても、3人の主演女優が並んでいるポスターでの各々のたたずまいが素晴らしいなと。シャーリーズ・セロンは堂々とした立ち振る舞いで全てを見透かすようなまなざしをこちらに向けている。そう、彼女には彼女しか知らない重要なカードがあると言わんばかり。ニコール・キッドマンもまた力強いまなざしをこちらに向けている。実際にロジャーを訴えた彼女の、必ず勝つという自信に満ち溢れた姿勢。そしてマーゴット・ロビーのこわばった表情、肩、手元。彼女の受けた仕打ちを如実に物語る。

 

これがハリウッドを代表する名女優か。