傘はあまり差したくない人

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『X-MEN ダークフェニックス』がたとえひどい作品でも私はあの最後を受け入れたいんだ。

2019年、壮大なX-MENサーガが幕を閉じた。

今でこそ『アベンジャーズ』などでアメコミ映画は日本にも深く浸透したが、それは2000年ころからの『X-MEN』『スパイダーマン』の人気から始まったものだと個人的には思っている。

 

およそ20年。

映画コンテンツとしてのX-MENは『ダークフェニックス』をもって終了を迎えた。もともとそうだったのだろうし、20世紀FOXがディズニーに買収されたという点がそれを後押ししたのだろう。

 

この世の映画の中で一番好きな映画を挙げろと言われると、言いよどんでしまう人はたくさんいると思うが、私は『X-MEN ファーストジェネレーション』を挙げたいし、シリーズものでいえば絶対的にX-MENというコンテンツが一番好きだ。

 

旧三部作と呼ばれるウルヴァリンが主人公の『X-MEN』。

当時としてはハイテクなCG技術を使ってミュータントの戦いを再現した映画は子供のころの私を夢中にさせた。

そもそも私はスカパーにてX-MENのアニメを見ており(X-MENエボリューションだったかな)、映画を観る前から実は結構好きだった。私が見ていたアニメではカート(ナイトクロウラー)はキュートな少年で、彼のことがお気に入りだったが『X-MEN2』では似ても似つかないキャラクターで衝撃を受けたものだ。

 

あまり評価の良くない『X-MENファイナルディシジョン』も好きである。ミュータントと人間たちの戦い。プロフェッサーの死。ウルヴァリンの決意。

 

そして始まる新X-MEN。『X-MENファーストジェネレーション』の完成度は映画として素晴らしい。一時も飽きさせない展開。キャストは今や世界的に有名になった面々ばかり。ジェニファーローレンスが青い肌なんて、今の彼女を考えると信じられない。

X-MENはチャールズとエリックの物語だった。二人がいかに互いを信じあうようになり、そしていかに互いを憎むようになったか……。

ファーストジェネレーションの完成度の高さたるや……。そしてこの物語を踏まえたうえで旧X-MENを見るとなんとも感慨深いものがある。特に、酷評されたファイナルディシジョンは各キャラクターの真の思いが透けて見えてX-MENというコンテンツがそこで完成したかのようにも見える。

 

が、『X-MENフューチャー&パスト』から少しずつ状況は変わる。

 

アメコミお得意の時間改変。

旧作をなかったことにしてきた……。ファーストジェネレーションを経てファイナルディシジョンに思いを巡らせた私の心はどこにいくんだ。

 

それでも私はフューチャー&パストが大好きだ。はじめは誰にも心を開かなかったウルヴァリンがプロフェッサーに出会ったことで変わったように、ふさぎこむチャールズを今度はウルヴァリンが変えていく。強く美しく成長したミスティークと、後に引けなくなったエリック。それぞれのキャラクターたちの物語を丁寧に描いている。

人間VSミュータントの構図が明確に表れるのも大きい。

 

まぁ、既存のキャラを次々と退場させる展開は、どうかと思うけど……。ブライアンシンガーは評判は悪いが、X-MENを撮ってくれた人だし、『ユージュアルサスペクツ』は名作だし。

 

ぜーんぶなかったことにされたあと『X-MENアポカリプス』が公開される。当時はこれで終わりかと思っていた。

 

サイクロプスジーン、ストームなどおなじみのメンツが登場する本作は、新X-MENでようやくエグゼビアスクールの姿を見せた。なんとナイトクロウラーは『X-MEN2』とは打って変わってかわいらしい男の子になっているではないか。ありがとう。

そこには教鞭をとるチャールズ、プロフェッサーXの姿があった。

ファーストジェネレーションのキャラクターも再び登場し、懐かしさを見せてくれた。

 

再び悪の道に戻るしかないエリック、教育者としてふるまうチャールズ、それぞれのこれまでの軌跡がよく見える。

そんな本作はけっこうお気に入りだ。既存キャラの退場は相変わらずあるけど……。

 

また行きついた先も気持ちがいい。旧X-MENでは閉じ込めるしかなかったフェニックスを、新X-MENでは解放させた。これが旧と新の違い。前作で変えた未来の結果である。

旧作ではプロフェッサーは間違いを犯したかもしれない、しかし新作でチャールズは彼女を抑圧することなくありのままの彼女を受け入れた。

その先に待つのは輝かしい未来のはずである。

チャールズとエリックはかつてのようにお互いを信頼しあい、そしてあのミスティークがX-MENの指揮を執る。

 

真のX-MENの誕生を目の当たりにし、物語は幕を閉じる。

 

と思っていた。

 

そして『X-MENダークフェニックス』が公開された。

まさか続きがあるとは思わなかった。あれだけ美しく終わったのに、続けるということは結局またどこかでいさかいが起こるのだ。戦いは終わらない。

 

今度こそ終わりといわれ、悲しくもあるがもっと前に終わっておけとも思った。

 

そして本編。

 

度重なる撮り直しにより、お世辞にもいい出来とはいえない。

既存キャラの退場なんて生ぬるかったと思わせるほどの重要キャラの退場。人気キャラも序盤で退場。

X-MENの内部分裂。すべて自分勝手で驕っていたチャールズが招いた結果。アポカリプスでのあの聡明なチャールズはどこにいった?

 

誰がこんなものを見たかったのだ?

 

長く続いた映画コンテンツとしてのX-MENの終わりがこれでいいのか。

 

しかし、私はそれでもダークフェニックスの終わりに納得しよう。

 

ダークフェニックスがフェニックスとなり全てを救ったその後、おのれの過ちを悔いてか隠居したチャールズの姿を見て、これが、終わりだと悟った。

 

終わらない戦いに身をゆだね、見えない未来に備え気を張り詰め続けるあの終わりは、X-MENの終わりとしてはよかったかもしれない。

それでもチャールズとエリックが、平和な世界でチェスをうてる。それこそが、終わりであるべきなのかもしれない。戦いはいつか終わるべきだし、映画コンテンツとしてのX-MENは、チャールズとエリックの物語としての側面もあったのだから。

 

私は常にX-MENを全肯定して生きていたいのだ。だから、常に私の好きなX-MENでいてくれてありがとう。