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『ジュディ 虹の彼方に』を観た。

本年度アカデミー主演女優賞受賞の『ジュディ 虹の彼方に』を観た。

ジュディ・ガーランドを知らなければネタバレあり。

 

gaga.ne.jp

 

アメリカの女優ジュディ・ガーランドの伝記映画。

 

オズの魔法使い』にて主人公のドロシーを演じ一躍ハリウッドの大女優となったジュディの苦悩を描いている作品だ。

子役時代のがんじがらめな生活、薬物依存、それによる度重なる遅刻欠席による信頼の失墜。

それを経て愛する我が子のためにボロボロの体にムチをいれる彼女の姿は感涙必至。

 

主演のレネー・ゼルウィガーは歌唱シーンを吹き替えなしで行っており、文字通り体当たりの演技。

まさにジュディ・ガーランドその人を見ているような印象で、演技がすごいとか思う暇もなく引き込まれた。

 

近年『ボヘミアン・ラプソディ』『ロケットマン』など、歌を題材に実在の人物を描く伝記が人気を博しているが、今作も同じような系統。

とはいえ、上記2作はいかにしてそのような人生を歩んだか、そしていかに苦悩しながらそれを克服したかを描いているのに対して、『ジュディ』はいきなり晩年から始まる。一躍スターになり、しかし薬物依存神経症などで信頼を失い、4度の結婚と離婚を経験し、後先ない状況から始まる。細切れに壮絶な子役時代を描くことで彼女がいかに苦労してきたかが断片的に描かれる。

これは最近の音楽作品とは違うところだろう。

 

ボヘミアン・ラプソディ』『ロケットマン』は人から理解されがたい愛に生き、それを音楽の力で克服していったが、ジュディは失いかける我が子への愛に生き、音楽の力でそれを取り戻そうとする。

我が子への愛ゆえに、失ってしまうことになっても、音楽によりなお救われる。

 

一時は最悪の関係になった観客とジュディの関係性が、虹の彼方に到達したかのようにきらめくのは美しい。

 

また、ジュディは当時としては珍しいLGBTへの理解がある著名人だった。

作中にゲイのカップルがジュディのファンとして登場するが、ジュディ本人がそういった理解者であるからこそ当時もLGBTのファンは多かったのだろう。実際、同性愛解放運動の象徴として用いられる「レインボーフラッグ」は『オズの魔法使い』の「虹の彼方に」から来ているそうだし、スラングで「ドロシー」は同性愛者を指すそうだ。

 

5度の結婚と離婚、子供に恵まれてもなお愛を注げない、ハリウッドに振り回された悲劇のヒロインとしての人生だったのだろう。

 

関係ないけど、ジュディの息子、『ダークマテリアル』のライラのお友達演じてる子じゃん。『ダークマテリアル』、第一話しか観てないからそろそろスターチャンネルに加入して観ないとな、と思い出させてくれた。